倍数の判定法(2,3,5など)

1.倍数と約数

2 つの整数 \(a,\;b\) について,整数 \(k\) を用いて \(a=bk\) と表されるとき,\(b\) は \(a\) の約数であるといい,\(a\) は \(b\) の倍数であるといいます。

例えば,\(6=2\cdot 3\) なので,\(2\) は \(6\) の約数,\(6\) は \(2\) の倍数です。一方で,\(5=2k\) を満たす整数 \(k\) は存在しないので,\(2\) は \(5\) の約数ではなく,\(5\) は \(2\) の倍数ではありません。

例題

\(a,\;k\) は整数とし,\(N=3k+a\) とおく。次のことを証明せよ。

\(N\) が \(3\) の倍数である \(\iff\) \(a\) が \(3\) の倍数である

解答が開きます。
解答

\(N\) が \(3\) の倍数であるとすると,整数 \(n\) を用いて \(N=3n\) と表されるから
\[a=3k-N=3k-3n=3(k-n)\]
\(k-n\) は整数であるから,\(a\) は \(3\) の倍数である。
また,\(a\) が \(3\) の倍数であるとすると,整数 \(m\) を用いて \(a=3m\) と表されるから
\[N=3k+a=3k+3m=3(k+m)\]
\(k+m\) は整数であるから,\(N\) は \(3\) の倍数である。
よって,「\(N\) が \(3\) の倍数 \(\iff\) \(a\) が \(3\) の倍数」である。

上の例題で,\(3\) を正の整数 \(m\) でおき換えても,まったく同じことが言えます。すなわち

\(N\) が \(m\) の倍数である \(\iff\) \(a\) が \(m\) の倍数である \(\quad \cdots\cdots \quad Ⓐ\)

2.\(2\),\(5\) の倍数の判定

\(2\) の倍数を偶数,偶数でない整数を奇数ということは,これまでの生活のなかでいつの間にか覚えてしまっていたことでしょう。数学の勉強から離れているときでさえ言ったり聞いたりするほど,これらの言葉は日常に浸透しています。

ある整数が偶数か奇数かを判定するとき,その下 \(1\) 桁が偶数か奇数かで判定することも,私たちはいつの間にか知っています。下 \(1\) 桁が偶数ならばその整数も偶数,下 \(1\) 桁が奇数ならばその整数も奇数です。

このことは次のように説明できます。

例えば \(173=10\cdot 17+3\),\(3142=10\cdot 314+2\) が成り立ちます。一般に,正の整数 \(N\) の一の位の数字を \(a\;(0\le a\le 9)\) とすると,ある整数 \(k\) を用いて \(N=10k+a\) と表されます。

ここで,\(10=2\cdot 5\) なので,\(N=2\cdot 5k+a\)

\(5k\) は整数なので,Ⓐにより,\(2\) の倍数の判定は,一の位が \(2\) の倍数かどうかによってできます。一応の注意ですが,\(0=2\cdot 0\) ですから,\(0\) も \(2\) の倍数です。

問題 \(1\)

正の整数 \(N\) について,次のことを確かめよ。

\(N\) が \(5\) の倍数である \(\iff\) \(N\) の一の位が \(0\) または \(5\) である

\(2\) の倍数のときと同じようにすればよいので,解答などは特に必要ないと思います。

3.\(4\),\(8\) の倍数の判定

もちろん,\(4\) の倍数,\(8\) の倍数の判定は,上の \(2\) の倍数の判定法を繰り返し用いることでできるのですが,ここでは一度に判定できる方法を考えてみます。

\(1216=100\cdot 12+16\) と表されるように,すべての正の整数 \(N\) は,ある整数 \(k\) を用いて \(N=100k+a\) と表すことができます。ここで,\(a\) は \(N\) の下 \(2\) 桁の数であることに注意します。

\(100=4\cdot 25\) ですから,\(N=4\cdot 25k+a\)

よって,Ⓐにより,\(N\) が \(4\) の倍数であるかどうかを判定するには,\(N\) の下 \(2\) 桁の数が \(4\) の倍数であるかどうかを確かめればよいということがわかります。

問題 \(2\)

正の整数 \(N\) が \(8\) の倍数であるかどうかは,\(N\) の下 \(3\) 桁が \(8\) の倍数であるかどうかで判定できる。このことを示せ。

方針

\(1000=8\cdot 125\) であることを利用します。

4.\(3\),\(9\) の倍数の判定

\(3\) の倍数,\(9\) の倍数は,それぞれ次の判定法が知られています。

\(3\) の倍数 \(\cdots\cdots\) 各桁の数の和が \(3\) の倍数
\(9\) の倍数 \(\cdots\cdots\) 各桁の数の和が \(9\) の倍数

これらを確かめる前に,準備として次の問題を解いてみてください。

問題 \(3\)

 \(n\) を正の整数とし \[A_n=10^n-1\] とする。
 \((1)\) \(A_1\) が \(9\) の倍数であることを示せ。
 \((2)\) \(k\) を正の整数とし,\(A_k\) が \(9\) の倍数であると仮定する。このとき,\(A_{k+1}\) は \(9\) の倍数であることを示せ。

\((1)\) は計算するだけなので,\((2)\) の解答だけを示します。

\((2)\) の解答
解答

\(A_k\) が \(9\) の倍数であるから,整数 \(l\) を用いて \(10^k-1=9l\) と表すことができる。このとき
\[\begin{align}
  A_{k+1}&=10^{k+1}-1\\\\
  &=10^k\cdot 10-1\\\\
  &=(9l+1)\cdot 10-1\\\\
  &=9(10l+1)
\end{align}\]
\(10l+1\) は整数であるから,\(A_{k+1}\) は \(9\) の倍数である。

\((1)\),\((2)\) により,すべての \(n\) について \(A_n\) が \(9\) の倍数であることがいえます。

\((2)\) で \(k=1\) とすると,「\(A_1\) が \(9\) の倍数であると仮定すると,\(A_2\) は \(9\) の倍数である」となります。ここで,\((1)\) から \(A_1\) は \(9\) の倍数です。よって,\(A_2\) は \(9\) の倍数です。

\(a_2\) が \(9\) の倍数なので,今度は \((2)\) で \(k=2\) とすれば,\(a_3\) も \(9\) の倍数であるといえます。

以下同様に繰り返していくと,結局はすべての正の整数 \(n\) について,\(A_n\) が \(9\) の倍数であることがいえるのです。

このような証明法を数学的帰納法といいます。

では,\(3\) の倍数,\(9\) の倍数の判定法を確かめていきます。

\(m\) 桁の正の整数 \(N\) は次のように表すことができます。

\[N=a_{m-1}\cdot 10^{m-1}+a_{m-2}\cdot 10^{m-2}+\cdots\cdots +a_2\cdot 10^2+a_1\cdot 10^1+a_0\]

ここで,\(a_i\;(i=0,\;1,\;2,\;\cdots\cdots ,\;m-1)\) は整数で,\(0\le a_i\le 9\;(i\ne m-1)\),\(1\le a_{m-1}\le 9\) です。

問題 \(3\) で示したことを利用するために,次のように変形します。

\[N=a_{m-1}(10^{m-1}-1)+a_{m-2}(10^{m-2}-1)+\cdots\cdots +a_2(10^2-1)\\\\+a_1(10^1-1)+(a_{m-1}+a_{m-2}+\cdots\cdots +a_2+a_1+a_0)\]

問題 \(3\) より,\(10^i-1\;(i=1,\;2,\;\cdots\cdots,\;m-1)\) は \(9\) の倍数なので,整数 \(k_i\) を用いて \(10^i-1=9k_i\) と表すことができます。

よって\[\begin{align}&\begin{split}N=9a_{m-1}k_{m-1}&+9a_{m-2}k_{m-2}+\cdots\cdots +9a_2k_2+9a_1k_1\\\\&+(a_{m-1}+a_{m-2}+\cdots\cdots +a_2+a_1+a_0)\end{split}\\\\&\begin{split}\quad\;=9(a_{m-1}k_{m-1}&+a_{m-2}k_{m-2}+\cdots\cdots a_2k_2+a_1k_1)\\\\&+(a_{m-1}+a_{m-2}+\cdots\cdots +a_2+a_1+a_0)\end{split}\end{align}\]なので,\(N\) が \(9\) の倍数であるための条件は,\(a_{m-1}+a_{m-2}+\cdots\cdots +a_2+a_1+a_0\) が \(9\) の倍数であることです。また,\(9\) は \(3\) の倍数なので,上の式から \(3\) の倍数の判定法が得られます。

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