\(11\) の倍数の判定
\(11\) の倍数の判定法は,次のものが知られています。
(偶数桁目の数の和) と (奇数桁目の数の和) の差が \(11\) の倍数\(\quad \cdots\cdots \quadⒶ\)
\(473=11\cdot 43\) より \(473\) は \(11\) の倍数。
(偶数桁目の数の和)\(-\)(奇数桁目の数の和)\(=7-(4+3)=0\)
\(507672=11\cdot 46152\) より \(507672\) は \(11\) の倍数。
(偶数桁目の数の和)\(-\)(奇数桁目の数の和)\(=(5+7+7)-(0+6+2)=11\)
\(3719=11\cdot 338+1\) より \(3719\) は \(11\) の倍数ではない。
(偶数桁目の数の和)\(-\)(奇数桁目の数の和)\(=(3+1)-(7+9)=-12\)
偶数桁目と奇数桁目は,最高位から数えても一の位から数えても構いません。例 \(1\) では一の位から数えました。最高位から数えると,\(2\) つ目の例について
(偶数桁目の数の和)\(-\)(奇数桁目の数の和)\(=(0+6+2)-(5+7+7)=-11\)
となって,符号が変わるだけです。
もちろん,いくつかの例で上の判定法が機能しているからといって,いつでも有効であるとは限りません。ここからは,この判定法がいつでも正しいことを証明していきます。
\(10^1+1,\;10^2-1,\;10^3+1,\;10^4-1,\;10^5+1,\;10^6-1\) がいずれも \(11\) の倍数であることを確かめよ。
また,この結果からどのようなことが予想できるか。
解答例
\(\qquad10^1+1=11=11\cdot 1\)
\(\qquad10^2-1=99=11\cdot 9\)
\(\qquad10^3+1=1001=11\cdot 91\)
\(\qquad10^4-1=9999=11\cdot 909\)
\(\qquad10^5+1=100001=11\cdot 9091\)
\(\qquad10^6-1=999999=11\cdot 90909\)
であるから,いずれも \(11\) の倍数である。
この結果から,\(n\) が正の奇数ならば,\(10^n+1\) は \(11\) の倍数であり,\(n\) が正の偶数ならば,\(10^n-1\) は \(11\) の倍数であると予想できる。
問題 \(1\) の前半を利用すれば,\(7\) 桁の自然数 \(N\) について,\(11\) の倍数の判定法を証明することができます。
\(N\) の各桁の数を最高位から順に \(a,\;b,\;c,\;d,\;e,\;f,\;g\) とすると
\[\begin{align}
N&=10^6\cdot a+10^5\cdot b+10^4\cdot c+10^3\cdot d+10^2\cdot e+10^1\cdot f+g \\\\
&=(10^6-1)a+(10^5+1)b+(10^4-1)c+(10^3+1)d+(10^2-1)e\\\\
&\qquad+(10^1+1)f+{(a+c+e+g)-(b+d+f)}
\end{align}\]
(\(10\) の累乗)\(\pm 1\) の形をした部分はすべて \(11\) の倍数ですから,\(N\) が \(11\) の倍数となるための条件は,\((a+c+e+g)-(b+d+f)\) が \(11\) の倍数となることです。
よって,\(11\) の倍数の判定法Ⓐが正しいことがいえました。
次に,問題 \(1\) で予想したことを証明してみましょう。
まず,\(k\) を自然数とするとき,\(10^{2k-1}+1\) が \(11\) の倍数であることを,数学的帰納法で示します。
\(k=1\) のとき,\(10^1+1=11\) より正しい。
\(k=m\) のとき正しいと仮定すると,整数 \(l\) を用いて \(10^{2m-1}+1=11l\) と表されるから,
\[\begin{align}
10^{2(m+1)-1}+1&=10^{(2m-1)+2}+1\\\\
&=10^{2m-1}\cdot 10^2+1\\\\
&=(11l-1)\cdot 100+1\\\\
&=11(100l-9)
\end{align}\]
となって,\(k=m+1\) のときも正しい。
よって,すべての自然数 \(k\) について,\(10^{2k-1}+1\) は \(11\) の倍数である。
\(k\) を自然数とする。\(10^{2k}-1\) が \(11\) の倍数であることを示せ。
解答
\(k=1\) のとき,\(10^2-1=99=11\cdot 9\) より正しい。
\(k=m\) のとき正しいと仮定すると,整数 \(l\) を用いて \(10^{2m}-1=11l\) と表されるから,
\[\begin{align}
10^{2(m+1)}-1&=10^{2m+2}-1\\\\
&=10^{2m}\cdot 10^2-1\\\\
&=(11l+1)\cdot 100-1\\\\
&=11(100l+9)
\end{align}\]
となって,\(k=m+1\) のときも正しい。
よって,すべての自然数 \(k\) について,\(10^{2k}-1\) は \(11\) の倍数である。
これで問題 \(1\) で予想したことが証明できたので,準備が整いました。いよいよ,Ⓐが \(11\) の倍数の判定法であることを証明していきます。
\(N\) を \(n\) 桁の自然数とします。各位の数を一の位から順に \(a_0,\;a_1,\;a_2,\;\cdots\cdots ,\;a_{n-1}\) とすると,
\[N=a_0+10^1\cdot a_1+10^2\cdot a_2+\cdots\cdots +10^{n-1}\cdot a_{n-1}\]
\(n\) が奇数のとき,\(n-1\) は偶数なので
\[\begin{align}
N=&(a_0+a_2+\cdots\cdots +a_{n-1})-(a_1+a_3\cdots\cdots +a_{n-2})\\\\
&+(10^1+1)a_1+(10^2-1)a_2+(10^3+1)a_3\\\\
&+\cdots\cdots +(10^{n-2}+1)a_{n-2}+(10^{n-1}-1)a_{n-1}
\end{align}\]
\(n\) が偶数のとき,\(n-1\) は奇数なので
\[\begin{align}
N=&(a_0+a_2+\cdots\cdots +a_{n-2})-(a_1+a_3\cdots\cdots +a_{n-1})\\\\
&+(10^1+1)a_1+(10^2-1)a_2+(10^3+1)a_3\\\\
&+\cdots\cdots +(10^{n-2}-1)a_{n-2}+(10^{n-1}+1)a_{n-1}
\end{align}\]
いずれの場合も,(\(10\) の累乗)\(\pm 1\) の形をした部分が \(11\) の倍数なので,判定法Ⓐがいつでも有効であることがわかります。
\(7\) の倍数の判定
\(8\) 桁の自然数 \(25361343\) を例に,\(7\) の倍数の判定法を見ていきます。
まず,\(25361343\) を,次のように末尾から \(3\) 桁ごとに区切ります。\[25\;|\;361\;|\;343\] こうして区切ったことで,\(3\) つの自然数が現れましたが,次に右から数えて奇数個目の数の和と偶数個目の数の和をそれぞれ計算します。
奇数個目の数の和:\(343+25=368\)\(,\qquad\)偶数個目の数の和:\(361\)
最後に \(2\) つの数の差を計算します。\(\qquad 368-361=7\)
このようにして得られた計算結果が \(7\) の倍数であることが,もとの自然数が \(7\) の倍数であるための条件です。よって,\(25361343\) は \(7\) の倍数です(計算してみてください)。
では,この判定法が正しいことを証明していきます。
\(10^3+1,\;10^6-1,\;10^9+1,\;10^{12}-1\) がいずれも \(7\) の倍数であることを示せ。
また,この結果からどのようなことが予想できるか。
普通に計算して \(7\) で割れることを確認してもよいのですが,特に \(10^{12}-1\) を \(7\) で割るのは大変です。\(7\) の倍数であることが示せればよいので,解答例では因数分解する方法を採りました。
解答例
\(10^3+1=1001=7\cdot 143\) より,\(10^3+1\) は \(7\) の倍数である。
\(10^6-1={(10^3)}^2-1^2=(10^3+1)(10^3-1)\) で,\(10^3+1\) は \(7\) の倍数であるから,\(10^6-1\) は \(7\) の倍数である。
さらに
\[\begin{align}
&10^9+1={(10^3)}^3+1^3=(10^3+1)\{{(10^3)}^2-10^3+1\}\\\\
&10^{12}-1={(10^6)}^2-1^2=(10^6+1)(10^6-1)
\end{align}\]
であり,\(10^3+1,\;10^6-1\) は \(7\) の倍数であるから,\(10^9+1,\;10^{12}-1\) はともに \(7\) の倍数である。
また,この結果から,\(n\) が正の奇数ならば,\(10^{3n}+1\) は \(7\) の倍数であり,\(n\) が正の偶数ならば,\(10^{3n}-1\) は \(7\) の倍数であることが予想できる。
問題 \(3\) で予想したことを証明せよ。
奇数の場合だけ示しておきます。偶数の場合も同じようにして証明できます。
解答
\(n=1\) のとき,\(10^{3n}+1=10^3+1\) で,問題 \(3\) より \(7\) の倍数である。
\(n=2k-1\) \((k\) は自然数\()\) のとき正しいと仮定すると,\(10^{3(2k-1)}+1=7l\) \((\)\(l\) は自然数\()\) と表されるから
\[\begin{align}
10^{3\{2(k+1)-1\}}+1&=10^{3(2k-1)}\cdot 10^6+1\\\\
&=(7l-1)\cdot 10^6+1\\\\
&=7\cdot 10^6\cdot l-(10^6-1)
\end{align}\]
問題 \(2\) より \(10^6-1\) は \(7\) の倍数であるから,\(n=2(k+1)-1\) のときも \(10^{3n}+1\) は \(7\) の倍数である。
よって,\(n\) が正の奇数のとき,\(10^{3n}+1\) は \(7\) の倍数である。
最後に,\(7\) の倍数の判定法を証明します。
自然数 \(N\) を末尾から \(3\) 桁ごとに区切ったときの,\(n\) 個の \(3\) 桁の数を末尾から順に \(A_0,\;A_1,\;A_2,\;\cdots\cdots ,\;A_{n-1}\) \((A_{n-1}\) は \(3\) 桁以下\()\) とすると
\[\begin{align}
N&=A_0+10^{3\cdot 1}\cdot A_1+10^{3\cdot 2}\cdot A_2+\cdots\cdots +10^{3(n-1)}\cdot A_{n-1}\\\\
&=A_0-A_1+A_2-\cdots\cdots +(-1)^{n-1}\cdot A_{n-1}+(10^3+1)A_1+(10^6-1)A_2\\\\
&\qquad +\cdots\cdots +\{10^{3(n-1)}-(-1)^{n-1}\}A_{n-1}\\\\
\end{align}\]
\((10\) の累乗\()\pm 1\) の形をした部分はすべて \(7\) の倍数なので,\(N\) が \(7\) の倍数であるための条件は,\(A_0-A_1+A_2-\cdots\cdots +(-1)^{n-1}\cdot A_{n-1}\) が \(7\) の倍数であること,すなわち,奇数個目の数の和と偶数個目の数の和の差が \(7\) の倍数であることです。
