2直線の交点を通る直線

方程式\(\;y-y_1=m(x-x_1)\;\cdots\cdots\;①\;\)は,点\(\;(x_1,\,y_1)\;\)を通り,傾きが\(\;m\;\)の直線を表す。いうまでもなく,点\(\;(x_1,\,y_1)\;\)は 2 直線\(\;x=x_1,\,y=y_1\;\)の交点である。①はこれら 2 直線の交点を通る傾き\(\;m\;\)の直線を表すといえる。

では,一般に,2 直線が交点をもつとき,その交点を通る直線を(交点を求めることなく)表す方法はないであろうか。

§1.直線が通る定点

次の問題を考えてみよう。

問題 1

\(k\) は定数とする。直線\[(k+2)x+(-3k+1)y-k-5=0\:\cdots\cdots\:②\]は \(k\) の値に関係なくある定点を通る。その定点の座標を求めよ。

定点を通ることはわかっているので,その座標を \((p,q)\) とすると,\(x=p\),\(y=q\) は②を満たす。よって,問題文は次のように言い換えられる。

等式 \((k+2)p+(-3k+1)q-k-5=0\:\cdots\cdots\:③\) が \(k\) の値に関係なく成り立つような \(p\),\(q\) の値を求めよ。

これは,③の \(k\) にどんな値を代入しても成り立つ,すなわち,③が \(k\) についての恒等式になるような \(p\),\(q\) の値を求める問題であるから,③を \(k\) について整理すると\[(p-3q-1)k+(2p+q-5)=0\]
これが \(k\) についての恒等式となるための条件は\[p-3q-1=0,\qquad 2p+q-5=0\]が同時に成り立つことであるが,これらを連立して解いて得られる実数の組 \((p,q)\) は,2 直線 \(x-3y-1=0\), \(2x+y-5=0\) の交点の座標を表す。

解答

②を \(k\) について整理すると
\[(x-3y-1)k+(2x+y-5)=0\;\cdots\cdots\;②’\]
この等式が \(k\) の値に関係なく成り立つための条件は
\[x-3y-1=0\quad かつ\quad 2x+y-5=0\]

これらを連立して解くと\(\quad \displaystyle x=\frac{\,16\,}{7},\quad y=\frac{\,3\,}{7}\)

よって,求める定点の座標は\(\quad \Big(\displaystyle \frac{\,16\,}{7},\;\frac{\,3\,}{7}\Big)\)

§2.2直線の交点を通る直線

本題に入る。

問題 2

2 直線\(\;2x+3y-4=0\;\),\(\;x-4y+2=0\;\)の交点と点\(\;(1,\,2)\;\)を通る直線の方程式を求めよ。

問題 1 の解答にある方程式②’が\(\;k\;\)のどんな値に対しても成り立つような実数の組\(\;(x,\,y)\;\)は,2 直線\(\;x-3y-1=0\;\),\(2x+y-5=0\;\)の交点の座標を表す。

また,方程式②の\(\;x\;\)の項,\(y\;\)の項それぞれの係数\(\;k+2\;\),\(-3k+1\;\)は\(\;k\;\)の値にかかわらず,少なくとも一方は\(\;0\;\)でない。

よって,②’は\(\;k\;\)にどんな値を代入しても,2 直線\(\;x-3y-1=0\;\),\(2x+y-5=0\;\)の交点を通る直線を表す。

このことを踏まえると,問題の直線は次のように求められる。

解答

与えられた 2 直線は交点をもつ。

\(k\;\)を定数として,方程式\[2x+3y-4+k(x-4y+2)=0\;\cdots\cdots\;④\]を考えると,④は 2 直線\(\;2x+3y-4=0\;\),\(x-4y+2=0\;\)の交点を通る直線を表す。

直線④が点\(\;(1,\,2)\;\)を通るための条件は,④に\(\;x=1\;\),\(y=2\;\)を代入して

\(4-5k=0\qquad\)よって\(\qquad \displaystyle k=\frac{\;4\;}{5}\)

これを④に代入して整理すると\(\qquad 14x-y-12=0\)

当然ながら,2 直線の交点を求める方法でもよい。交点の座標は\(\;\Big(\displaystyle \frac{\;10\;}{11},\,\frac{\;8\;}{11}\Big)\;\)である。

また,\(k(2x+3y-4)+x-4y+2=0\;\)としても,同じ結果が得られる。

④ は 2 直線の交点を通る直線すべてを表すか?

点\(\;(1,\,2)\;\)のように,直線\(\;x-4y+2=0\;\)にない点を通るとき,\(x-4y+2\neq0\;\)であるから,④は\(\;k\;\)についての 1 次方程式となり,④を満たす\(\;k\;\)が存在する。

一方で,④に例えば\(\;x=2\;\),\(\;y=1\;\)を代入すると\(\;3+k\cdot 0=0\;\)となり,これを満たす\(\;k\;\)は存在しないから,2 直線の交点と点\(\;(2,\,1)\;\)を通る直線,すなわち直線\(\;x-4y+2=0\;\)は,④で表すことができない。

また,\(k(2x+3y-4)+x-4y+2=0\;\)とした場合は,同じように考えて,直線\(\;2x+3y-4=0\;\)を表すことができない。

ただ,神経質になる必要はないと思う。求める直線が 2 直線のどちらかである,というような,意地の悪いあるいは意味のない問題が出ることは,おそらくないであろう。

§3.補足

一般に,2 直線\(\;a_1 x+b_1 y+c_1=0\;\),\(a_2 x+b_2 y+c_2=0\;\)が交わるとき,方程式\[k(a_1 x+b_1 y+c_1)+a_2 x+b_2 y+c_2=0\;\cdots\cdots\;⑤\]は,これら 2 直線の交点を通る直線を表す。ただし,\(a_1 x+b_1 y+c_1=0\;\)を除く。

このことを確かめてみよう。

2 直線の交点の\(\;x\;\)座標,\(y\;\)座標をそれぞれ⑤に代入すると成り立つという点は,もはや説明不要だろう。

⑤を\(\;x\;\),\(y\;\)について整理すると\[(ka_1+a_2)x+(kb_1+b_2)y+c_1+c_2=0\]である。これが直線を表すための条件は

\(ka_1+a_2\neq0\qquad \)または\(\qquad kb_1+b_2\neq0\;\cdots\cdots\;Ⓐ\)

である。

ここで,\(ka_1+a_2=kb_1+b_2=0\;\)とすると,\(a_2=-ka_1\;\),\(b_2=-kb_1\;\)であるから\[a_1 b_2-a_2 b_1=a_1\cdot (-kb_1)-(-ka_1)\cdot b_1=-ka_1 b_1+ka_1 b_1=0\]が成り立ち,2 直線が平行であるということになってしまう。

よってⒶがいえるから,⑤は 2 直線の交点を通る直線を表す。

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